色名で春を想う

こんにちは、色彩活用研究所のカラーリスト池田です。

最近はコロナウイルスの話を聞かない日はないほどで、いろいろな形で影響を受けていますね。春らしく暖かくなって、普段であれば飲んで食べてとお花見が楽しい季節なのに、なかなか大勢で集まることができない状況…。

だからこそ逆手にとって、いつもと違う「春の楽しみ方」をしたいですね。
都内では週末の雪と雨でだいぶ散ってしまいましたが、静かにゆっくりと桜の色そのものを鑑賞するのも良いですね。

さて桜ですが、万葉集の時代は桜より梅の方が多く歌に詠まれているそうで、「花といえば桜」となったのは、桓武天皇が都を京都に移し、御所の紫宸殿の前庭に吉野から取り寄せた桜を植えたことから礼賛が始まったと言われているそうです。

ただそのとき植えた吉野の桜は、私たちがイメージする「ソメイヨシノ」の桜色とは違い「山桜」なので、その花の色はもっと白いようです。


左:山桜 右:ソメイヨシノ (山桜写真 参照:みんなの花図鑑より

「ソメイヨシノ」が主流になったのは、明治時代になって全国の桜の80%をソメイヨシノに植え替えたためだそうです。
なので平安時代の人がイメージする桜色と、現代の人がイメージする桜色とはきっと少し違うんですね…。
そう考えると平安時代末期の歌人の西行が歌った有名な歌(私も大好きな歌!)

「願はくば 花の下にて 春死なむ その如月の 望月のころ」
(願うことなら(旧暦)2月15日の満月の頃、満開の桜の下で死にたいものだ)
は、やはり少しピンクみのあるソメイヨシノの下ではなく、白い花の山桜の下の方がより歌のイメージにはあっている、(ソメイヨシノの下だと、出家した人の歌にしては艶っぽすぎ…)と妙に納得したりします。

そして、みんな大好きソメイヨシノの桜ですが、戦後に植えられ老朽化しているのと実は病気に弱いため、全く違う品種の桜に植え替えをしつつあることを知っていますか?
その品種は「ジンダイアケボノ」という「ソメイヨシノ」よりももっとピンクみが強い品種なのだそう。もしかしたら令和時代の人がイメージする桜色は、私たちがイメージする桜色と少し違うイメージを持つのかもしれませんね。

春をイメージする色名は他にも。
「裏葉色(うらはいろ)」のお話はこちらのブログから・・・

美しい色の名前は他にも沢山あるので、ぜひご自分お好きな色名を探すのも楽しい時間だと思います。いつもなら、忙しさに紛れて細かいことに目が向かないことも多いですが、こんな時こそ、じっくりと豊かな時間を大切に過ごしたいものですね…。



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